保護者の方々と接していると肉親の愛というのはなんと深いものなのだろうと感じることが度々あります。
忘れられない情景がいくつも思い浮かびます。
「このままで高校へ行けるでしょうか?」と涙ながらに相談にいらっしゃったご夫婦。
進学校に進み、壁にぶつかり
「息子ががんばっているのに報われないのがいたたまれなくて」
とおっしゃったお母さま。
子どもの進路のために必死で塾探しをしていたお父さま。
「自分がいなくなっても大丈夫なようになってほしい」
とお赤飯を持って頼みにきてくれたおばあさま。
多少の距離はなんのその、車での送迎をがんばってくれるご家庭。
教室責任者として保護者、子ども両者と接するようになってもう15年近くになります。
もう500家庭くらいとおつき合いをしてきた計算になります。
私は英語や数学や国語を「教える」ということ以上に、人間とは何かということを「教えられてきた」気が最近しています。
責任者として駆け出しの頃からうっすらと感じていたことを言葉にできるようになったというべきでしょうか。
「がんばりなさい」
5月、今の時期は新しい環境に慣れつつもまだ気持ちや体力が追いつかない・・・
中高生にとってはそんな時期でしょう。
大人でも会社をどんどん辞めていく時期でしょうから、子どもにとってはなおの事です。
「もうがんばっている人にさらにがんばれとは言えない・・・」
そんな風に感じることもあります。
私だって大昔は中高生だったわけですから大変さは少しは分かっているつもりです。
しかし
「がんばれ。負けるな」
以外にかけられる言葉が見つからない時があります。
ご家族もきっとそうでしょう。
お仕事や家事をされていてご自身の経験からも大変さは分かっているでしょう。
それでも言うのです。
「がんばれ」「勉強しなさい」「ちゃんとしろ」
と。
そして最近私は思うのです。
「がんばれ、勉強しなさい」と言っていても本当は「幸せになりなさい」と言っているのではないかと。
「勉強して何になるの?」
この疑問は教育者にとって避けては通れないものです。
その時々、相手によって私の答えは多少変わるのですが今感じていることを、文章にしてみます。
未来をつくる子どもたちへ
英語や数学を今勉強して、将来実際に使うかどうかは分からないよ。
使う人もいれば使わない人もいるよ。
国語の文法なんかは・・・私は教えるの得意だけど、使わない可能性が高いね。
理科や社会で覚えたことも、もちろん大事だけど、知らないから生きていけないというようなことではないよ。
でも勉強っていうのは直接役に立つかどうかだけで価値が決まるものじゃないんだ。
ちょっとした言葉が人を傷つけることもあるし、人を救うことだってあるんだ。
一見無駄に思えるようなことにも価値があるんだよ。
学ぶことに実は終わりはないんだ。
でもだからこそ楽しいよね。
「人生で必要なことはもう全部学びました」
そんな風に言えてしまう人生は私は嫌だよ。
今、君が楽しんでいるゲームも動画も人類の小さな努力の積み重ねなんだよ。
そして、別に大きなことじゃなくても誰かががんばっている姿が、君の姿が人を勇気づけることもあるんだ。
実際に私は君たちががんばっていると嬉しくなるし、負けていられないなと思うよ。
歴史を学んで同じ過ちを繰り返さないようにすること、与えられた情報をただ受け取るだけでなく自分の頭で考えられるようにすることももちろん大事だよ。
今日のことや自分のことだけ考えるんじゃなくて、未来のことやほかの人のことを考えながら生きられないのであれば、私たちは人間としていったい何のために生まれてきたのさ。
それとね、照れくさいからめったに言えないんだけど、人と人が出会うってすごいことだよね。
今は世界の人口が80億、日本が1.2億を超えている。
その中で出会って、あいさつをして泣いたり笑ったりするっていうのはなんかすばらしいことだよね。
だから私は君たちに幸せになってほしいと思ってる。
家族ではもちろんないし、勉強面くらいでしか助けにはなれないんだけどね。
もうがんばっている君に「もっとがんばれ」って言うし、泣きそうな君に「負けるな」とも言うよ。
今は自分のことだけで精一杯かもしれないけど、いつか力をつけて誰かを助けられるような人になってほしい。
そして何より、自分自身が、どうか、幸せになりなさい。
個別指導塾 栄伸館塾長 小西啓太

